河合隼雄『こころの処方箋』より紐解く、自分を押し殺して生きる人が「上手くいかない」理由について

つい自分を押し殺してしまう人にこそ読んでほしい。河合隼雄『こころの処方箋』レビュー

読んでよかった本

あの日の自分に、ちゃんと謝ろう。

こんにちは!『今日も信仰は続く』を見ていただいてありがとうございます。桑原信司(@shin0329)です。

信ちゃん
信ちゃん

気軽に信ちゃん、って覚えてくれたら嬉しいな~!

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僕は昔からよく「真面目だよね」と言われるタイプの人間です。先生や上司の言うことを聞いて、決められたルールに従い、親の期待通りに生きることが「みんなを幸せにする生き方法」だと思っていたし、今でもそんな自分に出会うことがあります。

だからずっと「こうあるべきだ」「これが常識だ」という固定概念から逃れることもできなくて。なんなら「あなたはもっと自由に生きてもいいんじゃない?」みたいなアドバイスが嫌いでした。

どこか、無責任さみたいなものを感じたから。

けど、そんな僕の凝り固まったこころを、フッと軽くしてくれた本があります。それが今回ご紹介したい『こころの処方箋』という一冊。

ずっと自分を押し殺して生きてきた僕を救ってくれた、魔法のような本です。

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河合隼雄『こころの処方箋』

著者について

こころの処方箋』を執筆したのは、日本における臨床心理学の第一人者で京都大学名誉教授、元文化庁長官を歴任された 河合隼雄かわいはやお 先生です。

僕の母校である天理大学でも教鞭を執られていた先生で(実際にお会いすることは叶わなかったのですが)恩師である宗教学者の澤井義次先生から

「桑原君は心理学にも興味があるのか。だったら河合隼雄先生の本は読んでおきなさい」

とおすすめされていたことをきっかけに、本書を手に取りました。

どういった内容の本?

河合先生の本は難しいものもありますが、この『こころの処方箋』はとにかく読みやすい!

1話4ページのエッセイを、ぜんぶで55篇収録した短編集になります。

僕はkindle版を購入して、毎晩寝る前に数話ずつ読んでいました。どこを開いても河合隼雄先生の優しさに包み込まれてしまうような、素敵な本です。

自分を押し殺して生きる人の場合

今回はそんな短編集の「11.己を殺して他人を殺す」で解説されていた、「自分を押し殺して生きてはいけない理由」について解説します!

このエピソードで登場するのは、幼いときから他人の言うことをよく聞き、自分のやりたいことや言いたいことは後まわしにして、まさに「自分を押し殺して」生きてきたのに、なぜか人間関係で悩むことが多い女性です。

彼女はなぜ、他者とのコミュニケーションがうまくいかないのか?

その原因はなんと、押し殺したはずの「自分ゾンビ」に復讐されているから、でした。

「自分ゾンビ」に、気をつけて!

このエピソードに登場する女性は、どうやら高校生くらいまでは「大人しくていい子」と評判だったそうです。

しかし、社会に出てしばらくすると「どうやら自分は嫌われている」ということに気がついてしまいます。そこで、悩んだあげく河合先生のもとへカウンセリングを受けに来たという流れ。

しかし彼女は、このカウンセリングを通して、次のことに気がつくことができたそうです。それは「あのとき押し殺したはずの自分は、まだ死んではいなかった」ということ。

つまり、彼女の人生を生きづらくしている犯人は、他の誰でもない「押し殺したはずの自分」だったのです。

この女性とのやりとりをふまえて、河合先生はこのように説明しています。

「己を殺す」と言っても、やはり自分は生きているのだから、自分を殺し切ることなど出来たものではない。言うならば、己の一部を殺すわけであるが、面白いことに、その殺された部分は何らかの形で再生してくるようである。あるいは、殺したつもりでも、半殺しの状態でうめいているかもしれない。とすると、このように、本人の気づかぬところで、急に動き出すこともあるはずである。

(略)

彼女に言わせると、いつも辛抱して生きているので、時にはたまらなくなって、少しくらい休んだり、息抜きしたりしても当然ではないか、ということになるが、そのタイミングは、もっとも不適切だ、ということになる。これは、彼女のなかで殺されたものが、生き返ってきて、復讐しているようなもので、こんなときは、見事に他人を殺すこともあるのである。

河合隼雄『こころの処方箋』より引用

そうなんですよね。「自分を押し殺す」とは言っても、人は誰でも我慢を重ねれば限界がきてしまいます。そうならないためにも、どこかでガス抜きする必要はあるんだけれども…

それはなぜか、周囲の人にとって不都合なタイミングで発動してしまうようです。

きっと無意識のうちに、押し殺したはずの自分が「周囲の人たちへの怒り」を発散させようと暴れてしまうからでしょう。

他人のために、己を活かそう

では、この「自分ゾンビ」を生み出さないためには、どうすればいいのでしょうか?

河合先生は「己を生かすことに努力すべきだということになろう」と推測されています。

ただ、「己を活かす」ということも存外難しい、ということも合わせて指摘されています。たしかにそれまで自分を押し殺してきた人が、急に自分のしたいことばかり優先させても、それはそれで嫌われてしまいそうですもんね。

だからこそ「他人のために己を生かす」ことが大切なのかな、と思ったりもしました。それは我慢を重ねるわけでもなく、かといって自分のやりたいことを優先するのでもない、お互いの力を引き出しあって助けあうという選択。

僕が信仰している天理教では、「人を助けることで、自分も助かる」と教えられます。

わかるよふむねのうちよりしやんせよ 人たすけたらわがみたすかる

『おふでさき』(三 47)

人を助けることと、自分が助けられるということは、本質的には同じだというこの教え。僕が天理教の教えの中でもとくに好きな言葉です。

これ以上「自分ゾンビ」に悩まされる人生はゴメンなので、僕はやっぱり「他人のために己を活かす」人生を歩んでいきたいな、と思います。

それではまた、次の記事でお会いしましょう。信ちゃん(@shin0329)でした!

あわせて読みたい

日本における臨床心理士の礎となった河合隼雄先生は、後の臨床心理士にも大きな影響を与えます。

『居るのはつらいよ』の著者・東畑開人先生もその1人。臨床心理学を現場で実践することがなによりも大切だと考え、はるばる沖縄のデイケアセンターに就職し、そこでの日々のなかから見つけ出した「ケアとセラピーの違い」について書かれた本書は必読です。

まだ読んだことのない方、ぜひ読んでみて下さい。

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