色褪せつつある枯葉が、木枯らしに吹かれて舞い上がる12月の京都。
先日、「願い事が叶う!」と、SNSを中心に若い女性に大人気の京都のお寺・鈴虫寺に行ってきました!
心地いい鈴虫の音色と、落語のようなすべらない説法。
若い女性の笑い声に包まれる不思議な空間と、飛ぶように売れていくお守り(笑)
そこには、新しい宗教のビジネスモデルがありました。ここでの学び・気付きがとっても面白かったので、シェアさせていただきますね!
鈴虫寺とは?どこにあるの?

鈴虫寺は、「願いが叶うお寺」として大人気の観光スポット。京都市西京区にあるお寺で、正式名称は妙徳山・華厳寺といいます。創建は1723年で、すでに300年ほどの歴史がある古いお寺なんですね。
なぜ「鈴虫寺」と呼ばれるようになったかというと、かつての和尚さんが「鈴虫の声を聴きながら」悟りを得られたことがきっかけ。
その和尚さんは、ぜひ参拝者にも鈴虫の美しい鳴き声を、1年中いつでも聞かせたいと思ったそうです。それから鈴虫について研究を重ね、飼育を始めたと伝えられています。
拝観時間
9:00~17:00(入門は16:30まで)
定休日
なし
拝観料
大人 500円 子供 300円(4歳~中学生)
※茶菓子付き
いざ!鈴虫寺へ!
ここからは実際に足を運んでみて、気付いたことなどを書き留めておこうと思います。
予約ができない鈴虫寺は、朝イチで行くのがおすすめ
この鈴虫寺の説法、セミナーなどと違って予約を受け付けておらず、受付順に入場します。
多い時には大行列ができるそうなので、僕らは平日の朝イチ、開門と同時刻の9時に到着しました。
ちなみに最寄り駅は阪急嵐山線の「松尾大社駅」。駅からは車で5分、歩いても15分ほどで付きます。
住宅街を抜けたところにあって、すこしわかりづらいかも…。なお近くにトイレがないので、予め済ましてことをおすすめします。
僕たちは車で行ったのですが、駐車料金は500円でした。見渡してみると、京都ナンバーでない車の多さには驚かされます。
けど、それよりもすでに行列ができていたことに、なによりも驚かされました(笑)
景色を楽しみながら、客殿へ
階段をのぼり、俗なる空間から聖なる空間へ…。

ちなみにこの階段は80段もあり(!)、その数は極楽への階段の段数と合わせてあるそうです。
階段を登りきると、お地蔵さんと門が見えてきます。お地蔵さんは後でお守りを買ってから手を合わせることになるので、ここはいったんスルー(笑)


門をくぐると、左に本堂、奥に受付と客殿が見えてきます。

受付で500円を払ったら、客殿にて説法を待ちます。撮影は禁止されていたので、公式HPから画像をお借りしていきますね。
「すべらない説法」が始まる…!
客殿に入ると、さっそく鈴虫の「リンリン…」という鳴き声が心地よく迎えてくれます。あまりに綺麗に鳴くので、客殿に入るまで「これ絶対CDで流してるよね?」と話してたのですが、生演奏でした(笑)
後で聞いたのですが、客殿の奥にケースが並んでいて、そこには約5000匹もの鈴虫がいるそうです。
また、席に着くとお茶とお菓子が出されます。これは禅宗の教えの一つである「茶礼」にもとづく心遣い。これが美味しくて…!
そうこうしているうちに、説法が始まりました。

説法の内容については、あまり詳しく書くことはできませんが、とにかく雰囲気が良かったのが印象的で。
小気味いい冗談をテンポよく交えつつ、鈴虫寺の成り立ちや、お地蔵さんへ願い事をする際の注意事項などが明かされていきます。
鈴虫寺のお地蔵さん「幸福地蔵菩薩」について
「願い事が叶う」と有名になった鈴虫寺のお地蔵さんは、その名を「幸福地蔵大菩薩」と言います。
「菩薩」とは、仏のさとりを体得し、「如来」へとランクアップするために善行を積んでいる行者のことだそうで。有名なのは観音菩薩や弥勒菩薩などですね。

ただ、この「幸福地蔵大菩薩」には、他の菩薩にはない、面白い特徴があります。
それは、他の菩薩が裸足であるのに対して「わらじを履いている」ということ。


本来、神仏に願い事をする「願掛け」には、「願い事が叶うまで毎日通わなければならない」というルールがあるのですが、この幸福地蔵菩薩さんは違います。
なんと、たった一度の願掛けで「願い事を叶えに家まで来てくれる」というありがたい菩薩さんなんだとか。
そのかわり、願い事が叶ったら「お礼参り」をして、お守りを返却しなければなりません。そしたらまた、お守りを購入して、願掛けをして、叶ったらお礼参りして…以下無限ループ。
ふむふむ。こうやってリピーターを獲得していくんですね~(ゲス顔)
鈴虫寺での「願い事」について
鈴虫寺の願掛けでは、いくつかのルールがあります。これも説法の中で聞かされますが、ここでもご紹介。
1.願い事は、1つだけ
あれもこれも…と欲張ったお願いはできません。2つ目の願い事をしたいときは、まず1つ目の願い事が叶ってから。
2.自分に「ふさわしい」お願い事をする
若い女性は「彼氏ができますように…!」というお願いされる方が多いそうですが、この場合は「私にふさわしい人と巡りあえますように…!」とお願いしなければならないのだとか。
年収1,000万のイケメンと…ではダメだそうです(笑)
3.「家内安全」「商売繁盛」「厄除け」はできない
これらは、お守りの範疇を超えるそうです。
ですから、この場合は「御札」を別途購入してくださいとのことでした。
4.あとは自分の努力次第
以上のルールを守ったら、あとは自分でも努力しましょう。「お願い」は「目標」と同じで、定めただけでは意味がないそうです。
やはり目標を定めたら、それに向かって努力し、達成する。これを何歳になっても繰り返すことが大切だと仰っていました。
「願い事が叶う!」理由が、わかった気がする…!
さて、ここまでの「願い事のルール」を簡潔にまとめると、
「自分にふさわしい願い(目標)を1つだけ定めて、努力する。」
となりますよね。
…うん、そりゃあ、叶いますよ! 逆説的に言えば、努力すれば達成できそう(ふさわしい)なお願いしかしてないんだから!笑
「現実的な目標を定めて、努力によって達成していく」という人間の普遍的な営みのなかに、さりげなく「ありがたい菩薩の存在」と、「お守り という菩薩との繋がり」を織り込んでいく。この辺が、非常にうまいなぁと思いました。
そして説法はクライマックスへ
そして最後の10分ほどで、禅宗のありがたい教えの紹介が3つほどありました。
特に胸に響いたのは「縁と運と徳」の話。
人と人との「縁」を大切にすれば、「運」というものが運ばれてきて、それは人としての「徳」に繋がっていく…

だから、「縁と運と徳」のサイクルを大切にしましょうね、という教えでした。
いろんなシチュエーションに当てはまる、わかりやすくてありがたい教えですよね。
お守りは飛ぶように売れていく
説法が終わったら、客殿の入り口側でお守りを購入することができます。ちなみに300円でした。
ほとんどの人が購入していくようで、あっという間に長蛇の列ができました。
ここでざっと計算してみたんですが、拝観料と御守りで計800円×説法1回につき100人の集客×1日5回の説法×365日で…年商はだいたい1億5千万円(!)
なんて秀逸なビジネスモデルなんだ…!宗教法人だから税金もタダだし、「坊主丸儲け」とはまさにこのこと…!
同じ宗教家として、なぜかちょっとやりきれなくなって、お守りは買わずにスルーしました(涙目)
綺麗に手入れされたお庭の景観を楽しみながら回って…

幸福地蔵菩薩に手を合わせて、帰路に着きました。

これからの宗教は
「いかに暮らしに溶け込むか」
今回の鈴虫寺の研修を終えて、僕がすごいな!と感じたのは「説明の丁寧さ」でした。
「おもしろい!」と評判の説法でしたが、その中身はまるで、それまで宗教に馴染みがなかった人に向けた、「神仏に祈る」という宗教的な営みのプレゼンテーション。
特に鈴虫寺のそれは、「わかりやすさ」と「キャッチ―さ」に振り切っていて。誰もが「なにに対して・どのように祈ればいいか」をキチンと理解したうえで、幸福地蔵菩薩の前へと導かれるという、完成度の高いプロモーションでした。
僕自身も、天理教の神殿に初めて足を踏み入れた方に対して、もっと「わかりやすく、キャッチーな説明」ができたらいいな、と感じさせられました。

それが最適解というわけではないかもしれないけど、1つの引き出しとして。
あと、年商1億を超えるお守りビジネスに関しては、僕は「宗教は売り物ではない」と考えているので、参考にはしないつもりでいますが…
「相手に価値を提供すれば、それに見合った金額が支払われる」という資本主義社会の原則は、宗教にも例外なく当てはまる。これの実例を見たことは、価値のある体験だと思いました。
いろいろと勉強になったなぁ。ありがとうございました!
それではっ!